藍は朝から、爽やかな笑顔を向けてくる。

「……おはよう」
 
 と返事をしたわたしは、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、それを一口飲んだ。

「透子、体は平気か?」

「うん。まぁまぁかな」

「そうか。なら良かった」

 読んでいた書類を閉じてファイルに入れた藍は、わたしのそばにやってきた。
 そしてそのまま、優しく抱きしめてきた。

「藍、どうしたの?」

 と問いかけると、藍は「今から会えなくなるから、透子をいっぱい充電しとく。満タンになるまで」と言っていた。

「充電って……。わたし、スマホじゃないんだけど」

「透子と赤ちゃんの愛を充電しておかないと、今から仕事頑張れないだろ?」

 なんて言われると、なんて返せばいいのか分からなくて答えに困ってしまう。

「……何それ。そんなの必要ある?」

 毎日一緒にいるのに、と思ってしまう。

「あるんだよ。少なくとも、俺にはな」

 朝からそんなことを言われると、恥ずかしいしなんか複雑な気がする。

「行かなくていいの?仕事」

「そうだった……。寂しいけど、行かないと」

「早くしないと、遅刻するよ?」

「分かってる。 じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃい。気をつけてね」 

 藍は仕事へと出かけていった。