「……え、何で?」
そして藍は、わたしの左手を握りしめてきた。
「こうやって見た方が、雰囲気あるだろ?」
「……別に」
そう答えたものの、結局のところ、藍の手を離すことは出来そうにない。
「透子、始まるぞ」
「はいはい」
映画を見続けて早一時間。突然出てきたキスシーンを見て、わたしはちょっとだけドキッとした。
なのにそれに影響され、藍に突然キスされた。
「何で今、キスするのよ……」
「なんでって、したかったから」
そう問いかけてもいつも、そう答えられる。
「……もう、すぐそうやって言うんだから」
でも最近、それも慣れてしまったせいか、イヤな感じにはならなくなった。
「透子、俺の膝に乗っていいぞ」
「はぁ?イヤよ……! あ、ちょっと……!!」
拒否したのに無理やり抱っこされ、藍の膝に乗せられてしまう。
「ちょっと、降ろしてよ……」
「ダメだ。こうしないと、君たちを抱きしめられないだろ?」
「……え?」
君たち……。藍は確かに今そう言った。 確かにそう言われると、そうなのだけど……。
たちってことは、お腹の中の赤ちゃんも、ってことだよね……。だけどもう、拒否は出来ないから諦めることにした。



