「透子……」
 
「女将さん、頑張ってください」

「……ええ。おおきに」

 わたしは「失礼します」とだけ伝えると、また店内へと戻った。

「透子ちゃん、お疲れ様」

「お疲れ様です。お先に失礼します」

 仕事を終えたわたしは、バックヤードへと戻りタイムカードを切ると、そのまま私服に着替えてお店を出た。
 するとーーー。

「……えっ」

「お疲れ様、透子。待ってたよ」

「……何でアンタがいるのよ」

 なのに目の前には、高級車に背を当てて待っている高城藍がいた。

「決まってるだろ?君を迎えに来たんだ」

「……は?」

 迎えに来たって……。わたしそんなこと、頼んでないんだけど……。

「さ、乗って透子」

「……いい。一人で帰れるから」

 そう言って交わそうとしたのに、「ちょっと待てって」と言われてそれを阻止された。

「何なの、もう!邪魔なんだけど……!」

「一人で帰るなんて危ないだろ?送ってくから」

「一人で帰れるから、大丈夫だって! もう、余計なことしないでよ……!」

 そう言って高城藍を睨みつけるけど、高城藍は怯むことなくわたしにこう言ってきた。

「前にも言っただろ。お前に何かあったら、俺が困るんだよ」