「透子、ちょっと話せる?」

「……あ、はい」

 わたしは女将さんと少し話すため、カフェの外に出た。

「あの、女将さん、今日はどうされたんですか……? わざわざ、ここまで」

 とわたしが問いかけると、女将さんはこう答えた。

「風の噂で聞いたんよ。透子が高城ホールディングスの御曹司と、結婚するって話を耳にして」

「えっ……!?」

 女将さんにまで、そんな話が……!? ウソでしょ……。

「本当なんか?結婚するって話」

「そ、それは……」

 わたしは何も言えずにいた。

「……やっぱり本当、なんやね」

「いえ……!結婚はしません」

「え?」
 
 女将さんは不思議そうにわたしを見ていた。

「あの人と結婚はしません。……確かにわたしは今、あの男の子を妊娠していますけど……。でも、結婚するつもりはありません」

「え、そうなん?」

「……はい。しません」

 何度プロポーズされても、わたしは結婚する気はない。
 あんな男と結婚したところで、わたしには何もメリットはないし……。

「アンタ……。子供はどうするつもりなん?産むんか……?」

「……一応、そのつもりです」

 本当にそれでいいのか分からない。答えなんて見つかってない……。