「わたし、あなたとは結婚しないって言ったはずだけど。忘れたの?」
「何言ってる。子供が出来たんだから、結婚しないとだろ? 俺はちゃんと責任を取るよ、透子と子供のために」
「……責任取れなんて、頼んでないし」
そう言われても、そうさせたのはあなた自身じゃない……。
「……ほんと、ムカつく」
「透子のそういう強気なとこ、ますます惚れるね」
そう言われてさらに、腹が立った。
からかってるのか、本気なのか分からない所が更に腹が立つ。
「さ、もうすぐ病院だ」
「はいはい」
病院に着いて受付を済ませたわたしたちは、待合室で待つことにした。
「ここに座るか」
「……うん」
名前を呼ばれるまで待合室で待つわたしたち。だけど隣に座る高城藍は、ちょっとだけ嬉しそうな表情をしていた。
「なあ、透子」
「何よ……?」
「子供、産んでくれないか」
隣に座りわたしの手を握ると、高城藍は真剣な眼差しでそう言ってきた。
「……え?」
「透子に、産んでほしいんだ。俺の……俺たちの子供を産んでほしい」
そんな真剣な眼差しで言われたら【NO】とは言えそうになかった。
「……分かってる。ちゃんと考えてるから、大丈夫だよ」
わたしのお腹の中にいるのは、大切な生命だ。



