重なったその唇は一瞬で離れた。

「……なんで許可なしにキスするの」

 と直後に問いかけると、彼は「なんでって?したかったから」と答えた。

「はぁ?したかったからって……。本当にクズね、あなたは……」

「そんなクズの子供を妊娠してるのは、君だろ?」

 そうやって突っかかってくる所も、腹が立つ。ムカつくし、イライラする。
 
「ふざけないで……。妊娠させるようなことをしたのは、あなたでしょ?」

 そうやって言葉を返すと、彼は「俺のものにするための、最終手段ってことで」と言って怪しく笑った。

「……そういうこと言うから、クズなんでしょ?何なのよ、本当に。ムカつく……!」

 わたしはそう言うと、彼の車から降りて店内に戻ろうとした。
 ーーーその時。

「え……?」

 高城藍に後ろから抱きしめられた。

「な、なにするのっ」

 離れたいのに、彼の香りがふわっと香ってくる。

「透子、君は俺だけのものだ。 他の誰にも、君を渡さない」

「やめて。離してよ……」

 そうやって変なことを言うかと思えば、今度はそうやって優しくしてくる。
 甘い言葉をかけたり、こうやって抱きしめてきたり……。本当に訳の分からないクズ野郎だ。
 なんでこんなクズ野郎と、身体を重ねてしまったのだろうか。