「お断りします、と言ったんです」

 わたしがそう言うと、彼女は「そう……。分かったわ。 なら、あなたを殺すわ!」と言って、わたしに近付いてきた。

「……やれるもんなら、やってみなさいよ」

「本当にやるわよ! いいの!?」

「いいわよ。やれるものなら、やってみなさいよ」
 
 こうなったら、覚悟を決めるしかない……。わたしは何があっても、この子を守るしかない。

「アンタなんて……。アンタなんて、死ねばいいのよ!!」

「……っ!? きゃああああ……!!」

 わたしは思わず、その場でしゃがみこんだまま目を閉じた。
 やられる……! 本当にそう思った、その時だったーーー。

「透子……!!」

 わたしをギュッと抱きしめて助けてくれたのは、藍だった。

「大丈夫か、透子?怪我はないか?」

「藍!? 何でっ……?」

 まさか藍が来てくれるなんて、思わなかった。 だけどホッとして、嬉しくて……。急に涙が止まらなくなった。

「藍……。何でその女のこと、かばうの!?」

「決まってるだろ?透子が俺の妻だからだ」

 頭は力強く、そう言ってくれた。

「藍、手が……」

「ん?」

 わたしを庇ってくれたことで、藍は手を切ってしまったようだった。