わたしはそう言って、高城藍を睨んだ。

「そんなに怖い顔しないでください、透子さん」

「あなた、何が目的ですか?」

「目的なんてものはありませんよ。……ただ、あなたと一緒に仕事がしてみたいだけ、ですよ」

 そんなこと言われても、信じられる訳がない。

「……お客様がお待ちなので、失礼します」

 わたしはそう言って立ち去ろうとした。なのに……。

「藤野透子さん、今夜ここでお待ちしています。必ず来てください。……必ず、ですよ」

 そう言って渡されたその紙は、わたしのサロンのポケットに忍ばせられた。

「……失礼します」

 わたしはそのままカフェの中へと戻った。
 
「透子ちゃん、あの人知り合いなん?」

「……いえ。知り合いではありません」

 そう聞かれたわたしは、そう答えて厨房の中に入った。

「……今更、何なの?」

 高城ホールディングスの御曹司がこんなところまで来て、スカウト?……ふざけないでほしい。
 高城ホールディングスのせいでわたしたちは、職を失ったと言うのに……。
 サロンの中に入れられたその紙を見ると、そこににはご丁寧に日時指定でホテルの場所まで書かれていた。

「……絶対に行かないから」

 わたしはその紙をグシャグシャに丸めた。