小宮(こみや)先輩は可愛い。

それはもう、抱きしめたくなるくらい。

キスで口を塞いでしまいたくなるくらい。

……俺の手で囲って、他の誰にも会わせたくないぐらい。

でも、こんな思いは先輩に知られたくない。

だって。

俺の手から離れて何の枷もなく自由に羽ばたく先輩が、一番、綺麗だから。


――先輩に恋をしたのは、今年の春。

友達が入るから、という軽い気持ちで決めた部活だった。

入部初日。顔合わせの際、マネージャーとして紹介された人達の中に彼女はいた。

『私は、小宮杏里(あんり)って言います。これから、よろしく!』

きっと、他の人からすれば、ただの挨拶の一つだったんだろう。

――俺には、あんなにも、眩しく見えたのに。