今度は、女だった。

こいつが『帝国の光』の、『表党』なのか『裏党』なのか知らないが。

とにかく、前回より一回り大きな募金箱を持って、これみよがしに持ってきたのは事実だ。

そして、エリミア会長達に歓迎された彼女は、俺達の前で、大層ご立派な演説をしてくれた。

「正直に言うと、『帝国の光』は資金難です」

とか言って。

嘘つけ。アホみたいに系列組織から金集めて、懐は豊かだろうに。

お前らが資金難なのは確かだろうが。

それは、お前らが粗悪品の武器を、高値で買いまくってるからだろ。

「『ルティス帝国を考える会』の皆さんも参加してくださった、地方での講演会…その為の広告費…。そして何より、このルティス帝国が生まれ変わる為に、皆さんの融資が必要です」

などと、宣うものだから。

馬鹿な『考える会』メンバー達は、すっかり焚き付けられてしまう。

「皆さんの善意の融資が、ルティス帝国の未来を変えるのです。可能な限りで構いません、皆さんのお力を分けてください」

ルティス帝国の未来なんていう、魔法の言葉に踊らされ。

ご大層な演説が終わると。

いざ、献金タイム。

「…うわ」

俺は、思わず声をあげてしまった。

財布を取り出そうとしていた俺の横で、エリアスが、封筒を取り出したからである。

そこそこの厚さに膨らんでいる封筒。

中身は、勿論万札の束である。

お前、まさか。

「エリアス…あなた、それ…」

「あぁ、これな。高校生のときから、ずっと貯めてた、お年玉貯金とバイト代。昨日下ろしてきたんだ」

マジかよ。

お前、頭正気か。

いや、こんなサークルに入ってる時点で、頭は正気ではないな。

「少しだけど、今日の為に…いや、ルティス帝国の未来の為に、使ってもらおうと思って…」

金の使い方は、本人の自由だと思うけどさ。

旅行に行こうが宝石を買おうが、全額ソシャゲにぶち込もうが。

アリューシャみたいに、ポテチ大人買いしようが。

それは本人の自由だと思うけどさ。

だからって、コツコツ貯めてた全財産、他人の組織に全額献上するとは。

正気の沙汰とは思えない。

アホだなぁ〜…。その金、献上したところで、粗悪品の武器購入に使われるだけだよ。

しかもそんな端金じゃ、精々手榴弾の一つや二つしか買えない。

エリアス、マジ馬鹿だわー…。そんなことに金をドブに捨てるなんて、マジアホだわー…と。

思っていたら。

それだけではない。

「俺も、貯金全額持ってきた」

アホ二人目現る。

アルファベット三兄弟の一人、Aである。

そんなことして惜しくないのか?と思ったら。

「ルティス帝国の未来の為なら、こんな投資、全然惜しくないからな」

とのこと。

惜しくないんだそうです。へー。馬鹿だね。