…全く、もう。

本当に、全くもうだよ。

『…会いに行こうか?』

「会ったら、抱き締めてキスして慰めてくれます?」

『…努力するよ』

ふふ。無理しなくて良いのに。

「冗談ですよ」

相手の心が弱ってるときに、同情や慰めで相手に付け入るのは、俺の常套手段だが。

ルルシーにそれをされても、嬉しくないよ。

だってルルシーは本命の恋人だから。

ちゃんと、お互い愛の気持ちを持ってキスしてくれなきゃ。

『…言っとくが、無理してスパイを続ける必要はないんだぞ。しんどいなら、戻ってくれば…』

「分かってます。大丈夫ですよ」

危うくなったら、即時撤退する。

その方針が帝国騎士団との間で決まったことは、俺もルルシー経由で知らされている。

でも、今はまだその時じゃない。

今日は単に、ルルシー欠乏症のせいで。

俺の心の、弱い部分が過敏に反応しちゃっただけ。

それだけの話だ。

「ルルシーと話して、元気出たので」

『…本当に、会いに行かなくて良いのか?』

「もう…大丈夫ですって。会いたいのは事実ですけどね」

『あぁ。俺も今、物凄くお前に会いたい』

え、何今の台詞。超萌えるんですけど。

おのれ。何故公衆電話には、録音機能がないのか。

「次の定期連絡のとき、会いましょう」

『…分かった。でも…』

「辛くなったら言え、でしょう?」

『…分かってるなら良い』

何でも分かってますよ。心配性なあなたのことなら。

大好きな、あなたのことなら。