こうして、アデライトは明日から生徒会室に来ることになった。
 今日は顔合わせだからと、渡された書類の計算が終わったところで先に帰るよう言われ、リカルドと共に送り出されたが――生徒会室を出たところで、リカルドが話しかけてきた。

「どう思った?」
「……えっ?」
「サブリナの案だ。私達の問いかけに頷きこそしたが、他に何も言わなかったのは……何か、気になることがあるからじゃないか?」
「……殿下……私は、臨時の手伝いで……」
「私が許すと言ってもか?」

 戸惑ってみせたが、リカルドは退かなかった。それに躊躇するように目を伏せつつ、アデライトは口を開いた。

「私が、気になったのは……氷中花を納品する、時間です」
「……続けてくれ」
「隣国での流行りは、私も商人から聞いたことがありますが……基本、数時間で氷は溶けるのでパーティーの直前に運び込むそうです。けれど今回、歓迎会が朝からなので前日の夜に納品になっています。いくら隣国より涼しいとは言え、天候によっては歓迎会の前に溶けてしまうのではと」

 そこで一旦、言葉を切ってアデライトは顔を上げ、困ったようにリカルドを見つめた。

「……殿下も、生徒会の皆様もお気づきの筈。これは、生徒会を手伝う為の試験のようなものなのでしょうか?」
「っ!?」
「だとしたら……殿下や役員の皆様、それにサブリナ様に異を唱えるのは、私には荷が重いので……申し訳ないですが、今回の手伝いは辞退させて頂ければと」
「ま、待ってくれ!?」

 アデライトの言葉に、リカルドが慌てる。そんな彼に対して――再び俯きながら、アデライトは声に出さずに嗤った。
 そう、生徒会役員達も馬鹿ではない。一回目の時も、サブリナの要望を取り入れこそしたが、万が一のことを考えてリカルドに代替え案を用意するよう言っていた。そして一回目では、リカルドはその準備を当然のように、アデライトに押し付けていた。
 ……今回、こうして二人になったところで切り出したところを見ると、リカルドはアデライトに代替え案についても手伝わせようとしたのだろう。
 しかし巻き戻った今、婚約者でも何でもないアデライトに、そこまでやらせるのは難しい。それ故、アデライトにサブリナの案の欠点を指摘させ、おだてるなどしてその気にさせて引き込もうとしたようだ。だが、それだとおだてるだけマシだが一回目と変わらない。

(私から、生徒会の手伝いを申し出た訳ではないし)

 リカルドに近付きたいと思ったが、利用されるのなら別に辞めても構わない。そうアデライトが思いつつ、顔を上げると――そのタイミングで、リカルドが頭を下げたのにアデライトは軽く目を見張った。