その日の放課後、アデライトはリカルドに連れられて生徒会室に行った。そして、他の生徒会役員に紹介された。

「アデライト・ベレスと申します。よろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしく頼む」
「早速だが歓迎会の為の予算について書き出し、計算までお願い出来るだろうか」
「おいおい。最初は、書類をまとめるくらいの簡単な……」

 知ってはいたが、生徒会役員は見目麗しい男子生徒ばかりだった。しかも選挙ではなく、前役員からの推薦なので家柄よりも、成績や人柄など生徒達から尊敬される生徒が選ばれるのだ。

(昼休みにも声がかかるかもしれないから、ドミニク達に伝えたら……随分と、羨ましそうだったものね)

 昼休みの時の二人を思い出して、声に出さずに呟く。そしてアデライトは、計算をと言ってきた眼鏡の男子生徒や気を使ってくれた金髪の男子生徒(確か副会長と、生徒会会長である)に微笑みかけた。

「かしこまりました」
「「「え?」」」
「領地では、父の仕事を手伝っていましたから」

 二人だけではなく、リカルドも驚いて声を上げる。令嬢は普通、書類仕事などしない。ただ令嬢故、お茶汲みなども出来ないのでおそらく一回目の時、サブリナは簡単な書類まとめや、各クラスへのおつかいくらいだったのだろう。
 しかし、アデライトは違う。一回目では生徒会と関わり合いはなかったが、妃教育でも契約書などの書類作成は習っていた上、巻き戻った今は領地経営の中で色んな書類を作っている。
 とは言え、一回目の話は出来ないのでアデライトは当たり障りのない答えを口にし、言われた書き取りと計算をしていった。

「どうだ。アデライトは、すごいだろう?」

 宙に浮いてそう言うノヴァーリスの姿は、アデライト以外には見えないが――そんな彼の瞳の先では、リカルド達生徒会役員が感心したようにアデライトを見ている。
 ……一方、アデライトはと言うと。

「すごいですね。氷の中に入れた花を、会場に飾るのですか?」
「ああ、サブリナが発案したんだ」
「隣国での流行りらしいな。新入生歓迎会では、卒業パーティーと違って制服での参加だから。せめて、会場は華やかにしようと」
「どうしても生徒会は男ばかりだから、女性の意見は参考になる。君も、素晴らしいと思うかい?」
「……ええ」

 書き出していた予算の使い方に目を通しながら、感心したように言う。そんなアデライトにまずリカルドが、そして他の生徒会役員達が話しかけてくる。
 それに、アデライトは微笑みながら頷いたが――しばしの間に対してつ、とリカルドが眉を顰めたことに、アデライトは心の中で、ノヴァーリスは他の者には聞こえないので声に出して嗤っていた。