「皆、どうだろうか? 朝の様子を見る限り、知識は申し分ないようだがやはり人間、直接話してみないと解らない部分もある。このクラスでより交流を深める為にも、彼女にクラス委員長をお願いするのは」
「いいですね!」
「賛成ですっ」
「私達も、同級生としてお手伝いしますわ!」
「そんな……!?」

 口々に賛同する同級生達に、サブリナがその顔色を怒りの赤から絶望の青へと変えて絶句する。
 一回目も、リカルドはこうして同級生達を味方につけて、サブリナをクラス委員長にした。巻き戻った今は、逆の立場になったが――そもそも、アデライトは立候補していなかったので、今回のサブリナの方がより惨めだと思う。
 そんなサブリナを、アデライトは内心で嘲笑った。

(リカルドが誘導したのもあるけれど、何よりさっきの暴言が効いたみたいね……元々、孤立させるつもりだったけれど。自滅してくれて嬉しいわ、サブリナ)

 もっともそんな考えを顔には出さずに、アデライトはクラス委員長を引き受けて――しかし、自分の考えが伝わっているノヴァーリスだけは、宙に浮きながらおかしそうに笑っていた。



「ベレス様は、学生寮にお住まいなんですね……あの! 馬車を用意しますからぜひ、明後日のお休みに我が家にいらしてくれませんか? ウラリー様と三人で、ぜひお茶会を!」
「ありがとうございます……ブラン様、レニエ様。よければ、名前で呼んでくれますか? 先程、話しかけてくれて私、とても嬉しくて」
「逆に、よろしいんですか!? では、アデライト様……どうか、私のこともドミニクと」
「私のことも、ウラリーと……アデライト様、これからよろしくお願いしますね」
「ええ、ドミニク様。ウラリー様」

 にこにこ、にこにこ。
 放課後に声をかけてきたドミニク達に、アデライトは笑顔で応えた。朝もだが、先程のクラス委員長を決める時も、彼女達はリカルドに声を上げて賛同してくれた。結果、穏便にリカルドとの接点が出来たのでお茶会や名前呼びくらいは安いものだ。
 
「では、ごきげんよう」

 そう言ってクラスを後にし、同級生達に挨拶をしながら校舎を出ようとしたアデライトだったが。

「ちょっと」
「……サブリナ様、ごきげんよ」
「調子に乗らないでね。リカルド様にちょっかいかけたら、承知しないから」

 背後から声をかけられ、振り向き様に挨拶をしようとするが、遮られて言いたいことだけ言うとサブリナは踵を返した。向かった方向からすると、生徒会室に行ったリカルドの元に行くのだろう。

(妃教育に行かなくて、大丈夫なのかしら……あと)

 アデライトが顔を上げると、廊下にいた他の生徒達が気まずそうに目を逸らした。放課後であり、廊下である。人目があるのを気にせずに警告してくる辺り、一回目より愚かだと思う。もっとも、つられてアデライトまで馬鹿を晒す義理はない。

「ごきげんよう」

 それ故、悲しげに微笑みつつも何を言わず、それだけ告げて――アデライトはその場を後にし、聖女像に祈りを捧げて学生寮へと戻った。