ストロベリー・ゲーム


どうしてバイト先にそのままかけてくれなかったんだろう、とばかり思った。
店長も途中でバイトを抜けることを許してくれただろうに。

バイト中はスマホの電源は落としてあるし、ロッカーに入れてあって持ち歩いていないからまず気づかない。ああでも、祖母もパニックになったのだろう。どこにかければいいかなんて分からないはずだ。考えても仕方がない。


日が沈んで、空を深い闇が覆っていた。よく冷える日だ。マフラーを雑に首に巻いてきたせいか、首に強く巻きついて息苦しい。
目的の部屋が目の前にある。もし祖父が、危ない状態だったらどうしよう。



“また顔も見られないような状態”だったらどうしよう。



震える手でそおっと引き戸の取っ手に手を当てる。






息を切らしながら病室のドアを開ける。
温かい室内の空気が、冷えて恐らく真っ赤になっているだろう鼻先に、ふんわりと触れた。

そして視界に飛びこんできたのは、