「今日は急な会議が入ってしまってね。せっかくの機会なのに、すまない」
「そう。こちらこそごめんなさい。いきなりランチに誘ったりして」
「いや。ありがとう。また今度、是非」
「うん」

 がっかりした声になってしまうのはやむを得まい。でも、電話越しであっても、彼の"ありがとう"にちょっとだけ癒される自分はなんて単純なのだろうと、ちょっと呆れる。

 ありがとうも、なるほども、その言葉自体が好きなわけじゃない。彼が言うそれが自分にとって特別なだけだ。