記念式典に合わせて町には記念の国旗をあしらった小物や王族の姿絵などが数多く売られていた。

 スーリアはぶらぶらと歩きながら、それらを眺めた。
 王室の人々が描かれた記念ソーサーや、国旗が刺繍された小物入れなどが所狭しと店の軒先に並んでいるが、一番人気はやはり婚約されたプリリア王女の姿絵のようだ。未来の夫である隣国の王太子殿下とのセット販売が急遽用意され、それは飛ぶように売れていた。
 見目麗しい金髪の美女と藍色の髪の凛々しい青年。見ていると本当に惚れ惚れとするような二人だ。

 スーリアはそれらと並んで、とある物を見つけて視線をとめた。魔法騎士の団員達の姿絵だ。公開訓練の時にスケッチしたのか、皆訓練用の鎧を身に着けて剣を握っている。スーリアはその中に、水色の髪の青年を見つけて、それを手に取った。
 姿絵の中のアルフォークは部下に何かを指示しているのか、片手に剣を握り、もう片手はどこかを指さしていた。整った美しい顔は、眉を寄せているせいでいつもより厳しく見える。

「スー」

 後ろから名を呼ばれ、スーリアは振り向いた。
 そこには普段着姿のアルフォークがいて、こちらを見て微笑んでいた。

「アル! お仕事お疲れ様。ルーエンさんの探索の魔法石の効き目はばっちりなのね?」
「ああ。この人込みでちゃんとスーを探せるか心配だったが、すぐ見つけられた」