半狂乱で叫ぶプリリア王女を見て、スーリアは呆然とした。自分は悪くないと叫び、未だにスーリアがまやかしなのだと主張して敵意を露わにする。こんな人のせいで多くの人が危うく死にかけたのだと思うとやるせない気持ちになった。

『私は王女なのよ! お父様! アルは私に下さい。お父様も先ほどの戦いぶりをご覧になったでしょう? 美姫と名高い私を守るのに相応しいわ』

 プリリア王女は父親である国王陛下に縋りついた。国王陛下は寵愛する側妃の若かりし日に瓜二つのプリリア王女を溺愛していると有名だ。その国王陛下は、縋りつくプリリア王女を見つめ、優しく目を細めた。

『無論、リアはこの国の王族であり、王女だ。確かに先ほどの戦いぶりは王族を守るのにふさわしいな』

 国王陛下の言葉にホッとしたような表情をしたプリリア王女は、次に続く言葉を聞き、表情を凍りつかせた。

『王族とは、国のためを第一に考えねばならぬ。国のために危険を冒して空間の歪みを浄化してまわるエクリードと、王宮にいるだけのお主。どちらが魔法騎士団長に守られねばならぬのか、そして、お主とこの少女のどちらが今のルーデリアに必要とされているのか……、当然わかるな? 下がれ、リア』
『お父様……。嫌よ。お父様!』
『誰か。下がらせろ』
『お父様!』

 近衛騎士により謁見室から引きずり出されるプリリア王女は、最後の最後まで罵声を上げていた。スーリアにとっては、なんとも苦々しい記憶だ。