あの時のスーリアは、王族である自分に臆することなく真っ直ぐに睨み返してきた。エクリードにとって、あんな女は初めてだ。みな、恐縮して頭を垂れるか、頬を染めてうっとりとするか。それなのに、スーリアはそのどちらでもなかった。
 
 真っ直ぐな瞳で『アル以外はいらない』と言い切った、その芯の強さは少女から女性への羽化を感じさせた。

「あながち冗談でも無かったんだがな……」

 視線の先に映る二人がお互いを愛しくて堪らないといった様子で見つめ合うのが見え、エクリードは首を振った。あの二人なら、安心してお互いを任せられる。権力に興味がなく、自分達が正しいと信じる道を進んでいる。お似合いの二人だ。

 ふと見上げた空は雲一つ無い快晴だ。どこまでも広がる水色の世界に、鳥のつがいが空高く舞い上がるのが見えた。