「ご機嫌よう、ルーエン様」
「やあ、マニィ。久しぶりだね」

 久しぶりに顔を合わせた婚約者は、マニエルを見るとにっこりと微笑んだ。

「はい、どうぞ。これを君に」

 差し出されたのはピンク色の花束だった。マニエルはまた涙がこぼれ落ちそうになり、慌てて指で目の際を拭う。最後まで自分の好きな色を覚えていてくれてこんな贈り物をしてくれる婚約者を、やっぱり好きだと思った。

「ルーエン様は、最近はどうお過ごししていたのですか?」
「最近? すごく忙しくてさ。もうすぐ建国記念式典があるからその裏方を手伝わされたり、王宮の修復作業をしたり、魔法の新薬の流通システムを検討したり……。マニィは?」

 宙を眺めながらここ最近の忙しさを語っていたルーエンは、マニエルの方を向くと、首を傾げて聞き返してきた。

「私は今までと同じです。刺繍したり、お茶会に行ったり、本を読んだり……」
「そう言えば、あの小説どうなったの?」
「完結しましたわ。騎士様と乙女の大団円で──」