「一昨日の事だけど、四回も空間の歪みが発生して、その四回ともに魔獣が出た。そのうち二回は最上級の魔獣である水龍とサンダードラゴンだ。流石に一日でそんなに相手にするのは無理だよ。騎士団員が死ななかったのはリアちゃんの花のおかけだ」

 スーリアは無言でルーエンに先を促した。エクリードは腕を組んだまま、こちらを眺めている。

「あの日の夜、僕も怪我人の治癒に当たってかかりっきりだったから見てはいないんだけど、アルは足を痛めた部下をサンダードラゴンの攻撃から庇って、まともに雷撃を浴びたみたいなんだ」

 ルーエンはそこで一拍おいて息を吐くと、ゆっくりと目を開き、スーリアを見た。

「アルの右手はね、もう動かない。僕と殿下が治癒したから、それは間違いない。つまり、もう魔法騎士としては使い物にならないってことだ」

 スーリアはその話に、息が止まりそうな衝撃を受けた。右手が動かない? 確かに、先ほどスーリアに触れたのはアルフォークの左手だった。だが、アルフォークは右利きだ。思い返してみても、自分に触れるときはいつも右手だった。

「嘘だわ」

 スーリアは自分の声が震えるのを感じた。