スーリアは目をみはった。アルフォークはじっとスーリアを見つめている。恋人なのだから、キスくらいするだろう。けれど、スーリアにはハードルが高すぎた。真っ赤になりながらアルフォークをしゃがませて、その頬に軽く唇を寄せた。

「ありがとう。……頭が痛い事があったんだが、頑張れそうだ」

 去り際に微笑むアルフォークがどことなく元気がないように見えて、スーリアは咄嗟にその腕を掴んだ。なぜか、アルフォークが自分の手の届かない遠くに行ってしまうような、嫌な予感がした。

「スー?」
「王様から褒章を貰っても、私は恋人? 爵位を貰ったらアルは貴族様なんでしょう?」
「当然だ。俺の恋人はスーだ」

 スーリアの頬をアルフォークの指が優しく撫でる。

「好きだよ、スー」
「私もアルが好きよ」

 アルフォークが蕩けるような笑みを浮かべ、顔が近づく。目を閉じると、一瞬唇に柔らかな感触があり、すぐに離れた。アルフォークはスーリアに微笑みかける。

「暗くなるから、危ない。家に入らないと」
「うん、ありがとう」