「そういえばアル。珍しく今度の舞踏会に出るんだな? 招待客リストを見ていてお前の名を見つけたぞ」

 アルフォークは『舞踏会』と聞いて、顔を顰めた。エクリードは持っていたパンが固いのか、パンの切れ端を紅茶に浸している。

「兄上の代理です。どうしても領地に戻る用事があるというので、代わりに出るのです」

 苦々しげな口調からは『本当は行きたくない』という気持ちがありありとうかがえた。エクリードはそんなアルフォークを見て苦笑した。

「パートナーは誰を? リアがお前のパートナーをしたいと騒いでいたぞ」
「リア様にパートナーを務めて頂くなど、俺には分不相応でしょう。パートナーは従姉妹にお願いするつもりです」
「そうか。相手がいるならさすがにリアも諦めるだろうから、いいんだ」