「そうねぇ。恵ちゃんとリアちゃん、ちょっと手を繫いでくれる?」
女性に促されて『リアちゃん』と呼ばれる女の子が手を差し出してきた。
薄いピンクの波打つ髪は腰まであり、淡い緑の瞳は吸い込まれそうな程に澄んでいる。その子を見て、まるでアニメのキャラクターのような色彩の子だな、と恵は思った。本当にびっくりするくらい可愛らしい子だ。
恵はおずおずと差し出された手を握った。まるで測ったかのようにしっくりとその手は恵の手に馴染んだ。次の瞬間、恵の中に流れ込む怒濤のような記憶の山……
──生まれはルーデリア王国の王都。今十七歳で、名前はスーリア。郊外で農園を営む両親と二つ年上の姉の四人家族で暮らしていること。ルーデリア王国のある世界は表と裏の世界があり、女神シュウユが造った表の世界は人間の世界、男神ガングが造った裏の世界は魔獣の世界であること。そして今日は野いちごを摘みに一人で森に行き、たまたま発生した空間の歪みから現れた化け物に遭遇したこと……。
「あなたは死んだの?」
「そうみたい」
最後まで記憶を辿った恵が震えた声でたずねると、リアちゃんは少し寂しそうに微笑んでから頷いた。



