目の前の女性が恵ににっこりと微笑みかける。恵は訳がわからず表情を強張らせた。

 恵は混乱する記憶の欠片を必死にたぐり寄せる。
 最期の記憶はブレーキの音と身体に走った激しい痛み。自分は車にひかれたはずだ。となると、ここは死後の世界なのだろうか。では、この二人はあの世への水先案内人と言うことだろうか。恵はその女性と女の子を見てそう思った。

「私は水先案内人じゃないわよ。恵ちゃんが死んだっていうのはあってるけどね。私、恵ちゃんにお願いごとがあるのよ」

 恵は驚いて目の前の女性を凝視した。
 女性の瞳はこの世界の空と同じ虹色。初めて会うはずの恵の名前を知ってる上に、何も言って無いのに心を読まれた?

「細かいことは置いといて、早速要件を言うわね。今はあまり時間がないの。私はシュウユ。ここの世界の人間にとっては創造の女神と言われる存在よ」

 その女性は少し得意げに胸を張るような格好をして微笑んだ。