追憶ソルシエール

「いらっしゃいませー」

耳に入った店員さんの声に安心する。安堵した気持ちを胸にやっとの思い出振り返って外を見てみれば足音の持ち主と思われる男の人が辺りをうろついていた。


視界に入らないようお店の奥へ逃げ、ふう、と大きな息をつく。

一旦逃げたからいいものの問題はこの後。家まで走る勇気も体力もない。とりあえず、誰かに連絡を。


お母さんはさっき連絡したとき仕事で遅くなるって言ってたし、お父さんは出張中だ。那乃を巻き込むわけにもいかない。
目に入った名前をタップし、電話をかける。



出てくれるだろうか。この時間だからご飯を食べたりお風呂に入ったり忙しいから気づいてくれないかもしれない。

その前に番号が変わってるかもしれないけれど。



プルル、プルル、無機質な音が耳に伝わる。

お願いだから早く出て。




────プツ、と切れて



「……もしもし岩田?」


機械を通した、いつもより少し低めにかかった声が聞こえる。


「た、たすけてっ」

「ん?」

「助けてほし、くて」


きっと意味がわからないと思う。

何年ぶりかに電話をかけた。
その第一声が"たすけて"だなんて。


でも、うまく頭が働かなくて、状況を説明することさえも難しい。