「今は二人しかいないし、誰かに聞かれる心配もないのに」

 美利がそう言ったところで裏庭の出入り口から声が聞こえてきた。

「二人きりの時間を大事にしたいんだよ」

 智樹は美利の身体を抱き寄せるとおでこに軽くキスをした。

「大好きだよ」

 頭を撫でて出入り口に向かう智樹。

「俺が一番乗りかと思ってたのに」

 そう言うのは竜だ。

 その後ろから和巳と琢己の姿も見える。

「俺たちも少し前に来たところだ」

「懐かしいな」

 歩いてきた和巳は美利の頭を撫でながら空を眺める。

「何か落ちてるぞ」

 琢己が拾ったのは折りたたんである小さな紙。

 美利が智樹に宛てて書いた去年の手紙だ。気付かないうちに一枚だけ落としてしまっていた様子。