クルミを拘束した男は楽しげな口調で説明する。


クルミはその顔に見覚えがあった。


2年生にあがって最初の一週間だけ学校に来ていた立石光平という名前のクラスメートだ。


随分長く休んでいるからとっくに学校をやめているのだと思っていた。


だけどこうしてクルミの目の前に現れ、あの仮面についても知っているということは、まだ学校にいたのかもしれない。


保健室登校などをしていたとすれば、クルミが知らなくても仕方ないことだった。


「長沢さんは四条さんの家に盗みに入って、そのまま焼け死んだんだね」


光平はクルミの前にしゃがみこんでそう言った。


クルミは大きく目を見開く。


闇の中で見た白い肌は光平のものではなく、光平の仮面の表面だったということに思い至ったのだ。


光平が言うように仮面はひとつではなかった。


そして、光平も仮面の所有者なのだ。


では、光平は一体なんの犯罪者になりたいのか……。


「さて、そろそろ始めようかな」


光平はそう呟くと、後ろ手に持っていた仮面を顔につけたのだった。