だけど正直期待はずれだった。


みんなはクルミのことを理解しようとする前に決め付けて羨ましがる。


なんの苦労もないのだと思い込んでしまっている。


そんな中で友人を作るのは一苦労だった。


でも、もちろんそんなことは父親の耳に入れていない。


そんなことを言えば「だから私の言うことを聞いていればよかったんだ」と、威圧的に言われるのがオチだからだ。


「そろそろ、かな」


クルミは屋敷を包み込む炎を見て呟く。


スマホを取り出そうとしたとき、近所の人が異変に気がついて外へ出てきた。


それを確認してクルミはスマホをポケットに戻した。


通報する必要もなさそうだ。


消防車が到着したら、屋敷の中から逃げ出てきたと思わせないといけない。


その時はクルミの演技にかかっているが、きっと大丈夫だろう。


なにせこの仮面を使って放火したのだ。


バレることはないという自信があった。


裏路地からジッと様子を伺っていたクルミの元に近づいてくる人影があった。


その人物の顔は真っ白で、まるであの仮面のような顔をしている。


その人物は、気がつけばクルミのすぐ真横に立っていた。


「え?」


クルミが相手に気がついて声を上げた次の瞬間なにかを押し当てられ、クルミはその場に倒れこんだのだった。