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炎はあっという間に燃え上がった。


灯油に火をつけるとこんなにも簡単に火が燃え上がるのだと、クルミは初めて知った。


裏から逃げ出したクルミは自分の家が燃えているのを見つめながら後退し、裏路地を逃げる。


十分火の手が屋敷を包み込んでから助けを呼ぶつもりだった。


もしかしたらその前に近所の人に気がつかれて通報されるかもしれないが、その時は全力で逃げるだけだ。


家から十分距離をとった場所で立ち止まり、クルミはようやく仮面を脱いだ。


オレンジ色の炎に照らされたクルミの顔は汗が流れていて、表情も引きつっている。


しかし胸の中は爽快感に溢れていた。


これで自分は自由になる。


勉強だってもうしなくていいし、生活するには困らないくらいのお金だってある。


そう思うと自然と笑みがこぼれた。


普段みんなからお金持ちのお嬢様だと羨ましがられてきた。


その度に、じゃあ私と変わってよと言ってやりたかった。


毎日毎日一秒単位でやることを決められている窮屈な生活になってみなよと。


クルミにとって今の学校は唯一自分の意思が反映されたものだった。