学校はどうして6時間で終わってしまうんだろう。


もっと、8時間でも9時間でもすればいいのに。


あっという間に授業が終わってしまっても、クルミはなかなか席を立つことができなかった。


家に帰るとまた勉強が待っている。


勉強が嫌なわけではないけれど、子供に関心を見せない両親と顔を合わせるのは嫌だった。


家に帰るとまるで自分は両親のロボットになってしまったような感じがするのだ。


自分は少しも自分の意思では動けない。


それはとても息苦しいことだった。


すぐに帰る気になれなかったクルミはひとりで校舎内を歩き始めた。


すでに廊下にいる生徒の数は少なくなっていて、部活動を開始する声がグラウンドから聞こえてきている。


みんな自分の意思で動いている。


真っ直ぐ帰るのも、部活に参加するのも、アルバイトに行くのも、きっと自分で決めたんだ。


どれだけお金がある世界よりも、クルミにとって自由のある世界のほうがずっと魅力的だった。


「あ、ここって……」


ぼんやりと歩いていると、いつの間にか屋上へ続く踊り場へ来ていた。


灰色の重たくて冷たそうなドアが聳え立っている。