リナはそんなクルミに対して興味も示さずに友人たちに囲まれて教室を出て行った。


クルミはそんなリナの後ろ姿を見送り、罪悪感が胸に広がっていくのを感じた。


放課後になるとリナは足早にグラウンドを横切って帰宅する。


その最中聞こえてくるのがテニスコート内でストレッチをしている部員たちの掛け声だ。


白いテニスウェアを身に着けて練習に励んでいる彼女たちを見ると眩しくて目を細めてしまう。


クルミは高校に入学後はテニス部に入部することを希望していた。


ウェアが可愛いからとか、そんな理由じゃない。


以前テレビ番組でテニスプレーヤーを見ていて運動をするなら絶対にテニスがいいと思っていたのだ。


テニスでプロになりたいなんて考えていない。


ただ、趣味のひとつとして練習して見たいと思っていた。


だけど父親の意見を無視して地元の高校に入学したクルミに、部活動をする自由は与えられなかった。


放課後は真っ直ぐに家に帰り、勉強をするのだ。


この約束を破ったとバレたら、その瞬間に転校させられてしまう危険もあった。


だからクルミは父親に言いなりになるしかなかったのだ。


クルミは眩しいテニス部員から視線をそらして、足早に校門を抜けたのだった。