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仮面をつけているリナの姿を見れば、きっと誰かが不振に感じるだろう。


けれどおもちゃを盗み終えたとき、そんな懸念もすでに吹き飛んでいた。


リナの動きは素早く、そして的確だった。


誰にもいないタイミングで売り場へ向かい、目的のものを躊躇なくバッグに入れる。


これが仮面をつけていないリナ自身だったら、とてもできなかったことだ。


お目当ての商品をもらったリナはその足で薬局の化粧品売り場へと向かった。


うつむいて足早に進んでいるものの、驚くほどにみんながリナを見ようとしない。


まるで自分が透明人間にでもなってしまったような感覚に陥る。


化粧品売り場に到着すると、リナの手はリップクリームへ手を伸ばしていた。


ピンク色のリップクリームは妹がほしがっていたものだ。


ほっておけばきっとまた万引きをしてしまう。


その前にリナが妹へプレゼントをしてあげるのだ。


そうすれば、もう妹の手を汚す必要はない。


次にバッグなどが売られている雑貨店へ向かうと、店頭に並んでいるネックレスを掴んでポケットに入れた。


弟へのお土産だけじゃダメだ。


妹も、母親もあんなに頑張って生活をしている。


そんな2人へも感謝の気持ちを伝えたかった。