2年B組の教室へ入るといつものように数人の友人たちに取り囲まれた。


「リナちゃん仮面の噂って知ってる?」


席へ向かう途中、1人がそんな質問をしてきた。


「仮面?」


リナは首をかしげて聞き返す。


「そう! この学校の七不思議でね、放課後1人で屋上へ向かうと仮面が落ちているんだって! その仮面をつけると自分が一番なりたい犯罪のプロになれるっていう噂!」


クラスメートはオーバーな身振り手振りでリナに仮面の噂話を伝える。


リナはそれに耳を傾けながら自分の席に座った。


子供だましの噂話だ。


内心そう思ったが、目を輝かせて興味のあるフリをしてみせる。


「なにそれ。犯罪のプロ?」


「そうだよ。だけど仮面は本当に必要な人の前にしか現れないんだって!」


リナが興味を示したと思い、そのクラスメートの声は更に大きくなっていく。


「そんな仮面があったら怖いね。どんな人でも犯罪者になっちゃうってことでしょう?」


「だよねぇ! 実は私何度か放課後の屋上に行ったことがあるんだよね」


途端に声のトーンを落とす。


その表情はやけに真剣だ。


リナは内心冷めた気持ちでクラスメートを見つめた。