連射でリナの横顔を撮影した恵一は満足し、デジタルカメラをポケットへ戻す。


教室へ戻ろうと振り向いたそのときだった。


大きな壁が目の前にあってあやうくぶつかってしまいそうになった。


ギョッとして立ち止まった恵一を、その壁は見下ろしていた。


「なにしてたんだよ今」


壁がしゃべった。


いや違う、壁ではなくてクラスメートの大田だ。


大田は学年でも一番体が大きくて、キックボクシングをしているという噂を聞いたことがあった。


恵一は大田を見上げて、その身長差に青ざめた。


165センチでヒョロリとした体系の恵一と、195センチでガッチリとした体系の大田では、見下ろされるだけでひるんでしまう。


「べ、別に」


小さな声で言って大田の横をすり抜けようとしたが、腕を掴まれてとめられてしまった。


大田からすればそれほど力を入れて引き止めたわけでもないのに、恵一は体のバランスを崩して窓に手をついた。


リナがその振動に気がついて一瞬視線をコチラへ向けた。


恵一の心臓が一段と高鳴る。


しかしリナは恵一と大田に関心がないようで、友人を笑いあいながら教室へと戻っていってしまった。