弟は1度テレビを見始めたらずっと張り付いて離れないからだ。


弟はぶーぶー文句を言いながらも妹の言うことをちゃんと聞いている。


本当に、この家に妹がいなかったらもっとてんてこ舞いになっていたはずだ。


それがわかっているからこそ、リナは今日見てしまったことを妹に問いただすことができなかった。


考え事をしていたら手元が狂った。


泡だったグラスが音を立てて床に落ちる。


ハッとして視線を向けると幸い割れてはいない。


「お姉ちゃん大丈夫?」


グラスに手を伸ばしているとすぐに妹がかけつけてきて、リナは一瞬動きを止めた。


「うん。大丈夫」


笑顔を向けて返事をする。


本当は家では素のままでいたいのに、リナのその笑顔は作られたものになってしまったのだった。