「あ、ちょっと!」


リナが声をかけたときには玄関は閉められてしまっていた。


「お小遣いだって少ないのに、もう。ちょっと出かけてくるから、お留守番よろしくね!」


リナはリビングで勉強をしている弟に声をかけ、返事が来るのを待ってから妹の後を追いかけた。


父親が死んでから長沢家の家計は苦しかった。


父親の生命保険が下りたことと母親は朝から晩まで仕事をしていることでどうにか成り立っている。


もう何年も使っている運動靴を履いて妹の後を追いかける。


妹の足は以外の速くてその背中を確認することができない。


けれど自転車は家においてあったから、徒歩で行けるスーパーへ向かったようだ。


リナは最寄のスーパーに入ると冷房にホッと息を吐き出した。


早足でここまで来たから背中にはジットリと汗が滲んでいる。


妹の姿を探すために青果売り場を歩くがその姿は見つからない。


タマネギ1個だから、もうレジへ向かったのかもしれない。


そう思って視線を他の棚へ向けたときだった。


妹の後ろ姿が見えてリナは軽く微笑んだ。


やっぱりいた。


レジを通ってしまう前にお金を渡さなきゃ。


そう思って足早に妹に近づいたときだった。


妹が右手に持っていたタマネギを体前に広げたエコバッグに入れるのを見てしまったのだ。


え……。