酒の席には他にも何人かいたらしいが、車を運転している犯人の飲酒を止める人は1人もいなかったと聞いている。


そんな連中にリナの父親は殺されてしまったのだ。


思い出すと胸の奥から苦いものがこみ上げてきてリナは顔をしかめた。


普段外ではしない表情だ。


「じゃ、行ってくるから」


いつの間にか買い物に行く準備を整えて玄関へ向かう妹の後を、リナは慌てて追いかけた。


「待って。お金出すから」


リナは自分のサイフを握り締めて言った。


アイドル活動で得たお金の他に、母親から生活費として預かっているお金がある。


この家の食費や消耗品は、母親とリナが買い物に行くことが多いからだ。


「タマネギくらい私も買えるから大丈夫」


妹はそう言うと笑顔を向けて玄関を出て行ってしまった。