そんなクルミはアイドルであるリナの存在が気に入らないようで、ことあるごとに突っかかってくる。


リナもクルミに嫌味を言われるとつい言い返してしまいそうになったりして、やっかいな相手だった。


「ねぇ?」


首をかしげたクルミはリナの持っている体操着袋を指差している。


クルミに指摘された通り、リナの体操着袋にはハートのアップリケがつけられている。


可愛くて気に入っているけれど、オシャレのためにつけたのではない。


袋が破れてしまったからつけたのだ。


リナは咄嗟に体の後ろに袋を隠した。


「それって破れたからつけたんでしょう? シューズだって随分汚れて、それでも買い換えてないんだね。もしかしてお金がないの?」


その言葉に体がビクリと反応してしまう。


平静でいようと思っているのに笑顔が引きつってきてしまう。


他の友人たちはキョトンとした表情でリナとクルミのやりとりを見つめている。


ここで言い返したり、怒ったりしてはいけない。


みんなの見ている前では絶対にいけない。


リナは一度目を閉じて深呼吸をした。


「クルミちゃんに比べれば、私の家なんてお金がなくて当たり前だよ」


甘ったるい声で答えるとクルミは眉間にマユを寄せた。