恵一は一瞬リナを見ただけですぐに視線をそらして背中を向けた。


リナの存在を気にしていない風を装い、そっと近づく。


リナは廊下から窓の外を眺めて友人となにか会話をしている。


リナに近づくと自分の心臓が早鐘を打ち始めるのを感じる。


部屋一面に張ったリナのポスター。


そのリナが、今自分の目の前にいるのだ。


恵一はごくりと唾を飲み込むと、ポケットからデジタルカメラを取り出した。


リナは窓の外に視線を向けていて、恵一の動きに気がつかない。


恵一は左手でデジタルカメラを持つと、腕を組むようにして右のわきの下からレンズブブンをリナへと向けた。


デジタルカメラの色は黒だ。


この色を選んだのだって、制服の色と同化しやすいという利点があるからだ。


恵一は焦点を合わせると音を消した状態で連射で撮影した。


隠し撮りをするその瞬間は、相手にバレたらどうしようという不安が大きくて変な汗をかいてしまう。


悪いことをしているという自覚もあるし、リナにバレてしまったらどうしようとも思う。


だけどそれ以上に、相手に内緒で撮影することが快感にもなっていた。