リナは体操着を取り出して他のクラスメートたちと一緒に席を立つ。


1時間目から体育の授業だなんてめんどくさいな。


そう思ってももちろん声には出さない。


地元アイドルとして活動し始めてから不平不満を漏らしたことはほとんどない。


気を許しているのは家族に対してだけだ。


妙なグチを口走ることで自分の夢が絶たれるなんて考えられないことで、リナはいつでも自分の言動をコントロールしていた。


その分ストレスもたまるけれど、いつでも自分がアイドルでいられるような気分にもなれた。


「もしかしてそれ、縫ってるの?」


教室から出て行こうとしたとき後方からそんな声が聞こえてきて立ち止まった。


振り向いた瞬間うんざりした気分になる。


気分がそのまま顔に出そうになって、リナは慌てて笑顔を作った。


声をかけてきたのは同じクラスの四条クルミだ。


クルミは地元では有名な企業のひとり娘で、お金があることで有名だった。


お稽古事や勉強、美容にも沢山お金をかけているようで才色兼備だと有名だ。