南部君のようなファンがどんどん増えていくことを祈ってすらいた。


「ね、1度私がガツンと言ってやろうか?」


九条さんが拳を作って言うのでリナは慌てて左右に首を振った。


「ま、待って待って。私は大丈夫だし、実害だってないんだから」


それになにより全国デビューする前に汚点を作るようなことはできない。


南部君のような人を非難するのは実はとても怖いことだ。


自分の行動を否定された南部君がどのように感じて、どのように動き始めるかわからない。


もしもこちらの体や名誉に傷がつくようなことがあってはいけない。


「本当に大丈夫? このままエスカレートするかもしれないよ?」


「心配してくれてありがとう。本当に困ったらまた相談するね」


リナがそう言うと九条さんは嬉しそうに胸を張った。


自分がリナの相談相手になれるということが嬉しいみたいだ。


南部君にしても九条さんにしても、みんなよりもリナに近づくことを嬉しいと感じているのがわかる。


地元アイドルに特別扱いされるよりも、全国的なアイドルに特別扱いされたいでしょう?


リナは心の中でささやく。


きっと近いうちにそういう未来がくる。


だってこんなにも私は頑張っているんだから。