意識してそういうキャラクターを作っていると、みんなの前では自然とそういう風に振舞うことができるようになっていた。


案の定リナに友人は多かった。


クラスメートのほとんどはリナの友達だし、他のクラスにも沢山友達と呼べる子がいる。


けれどたった1人の親友を作ることは難しかった。


親友となれば自分の悩みを打ち明けたりできないといけない。


今のリナにとって、そこまで心を許せる子はいなかった。


どんな小さなグチでもアイドルにとって致命傷となる場合はある。


まだ全国デビューもできていないリナが、今から汚点を背負うことはできなかった。


「ねぇリナちゃん。ちょっと言い難いことなんだけどさぁ」


借りたCDをカバンにしまっているとき、ショートカットの女子生徒がおずおずと話しかけてきた。


隣の席の九条さんだ。


「なに?」


「南部のやつ、またカメ持ってきてるよ」


九条さんはリナの耳元に顔を寄せてささやいた。


リナはその言葉にチラリと南部恵一へと視線を向ける。


大人しい恵一は今も1人で机に座って文庫本を広げている。


恵一は誰かと楽しく会話をしているところを、リナは1度も見たことがなかった。