学校が昼休憩に入ったとき、ようやくそのチャンスはやってきた。


個室で手持ち無沙汰にしていたときにリナの声が聞こえてきたのだ。


恵一はハッと息を飲んで仮面をかぶった。


右手はすぐにデジタルカメラを取り出す。


リナの声が恵一のいる隣の個室へ吸い込まれていったとき、内心でガッツポーズをとる。


いいぞ。


これ以上のチャンスはきっと二度とこない。


そう考えたとき、体がトイレの床にベッタリと這い蹲った。


「げっ」


一瞬そんな声が出て慌てて口をつぐむ。


完璧な盗撮をするために必要なことなのだと自分自身に言い聞かせて、息を止める。


アンモニア臭のする床に自分の頬がベッタリと張り付いたとき、さすがに吐き気を感じた。


そんなことはお構いなしに右手はトイレの下の隙間から隣の個室を連写する。


今リナがすぐ隣で放尿している。


そう思うと体がカッと熱くなり、吐き気はどこかへ吹き飛んでしまった。


時間にしてほんの2分か3分。


いや、そんなにかかっていなかったかしれない。


女子のトイレが意外と短いことを知って恵一は少し驚いていた。


長くなるのはその後の立ち話や身だしなみのチェックに忙しいからみたいだ。


今日の目標をすべて達成した恵一はようやくトイレの床から離れて、手の甲で自分の頬をぬぐったのだった。