昨日は悲鳴も出すことができなかったのに、今は自分の意思で言葉を出すことができた。


一瞬混乱したが、すぐに冷静さをとり戻す。


もしかしたら回数を重ねるごとに自分の意思も反映されるようになるのかもしれな
い。


最初のときは恵一も驚いて悲鳴をあげてしまいそうになったから、牽制の意味があったのかも。


そう考えることにした。


なにせこの仮面は人間の想像を超えたものだ。


そのくらいのことができても、もう不思議だとは思わなかった。


そうこうしているうちに気がつけば女子更衣室の裏へ到着していた。


小さな窓の向こうからは女子生徒たちの明るい話声が聞こえてくる。


この窓も換気のために少しだけ開けられていたが、天井付近なのでとても手は届かない。


すると恵一の足は更衣室を隠すように植えるられている生垣へと向かった。


生垣の中に両手を突っ込み、なにかを探している。


指先に触れたそれを両手で引っ張り出してみると、赤色のブロックだった。


生垣の奥には花壇が作られていて、それに使われているものと同じだとすぐにわかった。


きっと余分に持ってきてしまったものをここに放置したのだろう。


けれどそんなこと恵一は知らなかった。


この仮面は恵一よりももっとこの学校について詳しいようだ。