このデジタルカメラがほしくてアルバイトを始めた恵一は、目的の金額まで稼ぐとすぐにやめてしまった。


そもそもコンビニのアルイバイトなんて恵一には会わなかったのだ。


休憩室はいつでもタバコ臭いし、店長は勝手にシフトを書き換えるし、客は傲慢。


恵一のような内気な性格の子には難しい職業だった。


しかし、このデジタルカメラだけはどうしても手に入れたくて、必死に我慢して半年間勤め上げた。


その間恵一がどれだけ走り回って客の対応をしても、どれだけ汗を流して重たいドリンクを運んでも店長は一度も褒めてくれなかった。


そんな店長は恵一が辞めるといったときには文句だけは口にした。


思い出すと苦い思い出だけれど、それがあってこそこのデジタルカメラを手に入れることができたのだ。


スマホでも撮影はできるけれど、やっぱり専用の機械がほしかった。


自分だけのあの子をこの中に閉じ込めることができるような気がしたから。