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「じゃあ、仕事に行ってくるから。なにかあったらすぐに連絡するのよ?」


「わかってる」


恵一は布団を頭までかぶって母親に返事をした。


今日は体調が優れないので学校を休むことにしたのだ。


そう伝えたときの両親の顔は蒼白で、すぐにでもかかりつけの病院へ電話しそうな勢いだった。


恵一はどうにかそれを止めて、1人で大丈夫だと説得した。


母親はパートを休もうとしていたが、それも断った。


出勤時間ギリギリまで渋っていた母親をどうにか送り出した恵一は大きく息を吐き出して、布団から顔を出した。


ベッドの中から母親の車が遠ざかっていく音を聞いた恵一はゆっくりと起き出した。


体調が悪いというのは嘘だった。


そういえば自分の両親ならすぐに学校を休ませてくれるとわかっていたからだ。


多少の申し訳なさを感じるが、それでも期待のほうが大きかった。


恵一はクローゼットを開けると昨日盗撮したときと同じ服を取り出し、それを自分の意思で身に着けた。


どんな犯罪でも地味で目立たない服のほうがいいに決まっている。


次に家の鍵とデジタルカメラをズボンのポケットに入れる。


スマホやサイフが使うつもりがないのでそのまま置いていく。


準備が終わった頃にはちょうどいい時間になっていたので、恵一は私服姿のまま学校へと向かったのだった。