それは真っ白な仮面だったのだ。


なんの絵も描かれていない、3つの穴が空いているだけの仮面。


「仮面」


呟いた瞬間背筋に寒いものが走った。


風が強く吹いて開けていたドアがバンッ! と大きな音を立ててしまる。


恵一は一瞬息を飲んでドアへと視線を向けた。


誰の気配も感じない。


だけど閉まっているはずの鍵が開いていて、あるわけがない仮面があった。


もしかしてこれは誰かが自分をハメるために準備したものではないか?


そんな考えだ脳裏をよぎる。


そして次に浮かんできた顔は大田の顔だった。


朝から恵一のわき腹を蹴ってきたあいつ。


あの男ならクラスの女子を使ってわざと恵一に噂話を聞かせ、ここまでおびき寄せることもあるかもしれない。


恵一ははじかれたようにドアへ向かって走り、勢いよく開けた。


もしかしたら校内から鍵がかけられたかもしてないと思っていたが、それは来たと
きと同様簡単に開いた。


階段にも踊り場にも誰もいない。


ホッとするのもつかの間、それではあの仮面は誰が置いていったのだとうという疑問が浮かんできた。


再び全身に寒気を感じて強く身震いをする。


ドアを開けたままにして、もう1度仮面へと視線を向けた。