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戸張高校2年B組の教室へと向かう恵一の背中は老人のように丸まっていた。


いつも自分の部屋で体を小さくしてヘッドフォンをつけて音楽を聞いていたから、歩くときにも同じように体を丸めるのが癖になってしまっていた。


恵一はB組の教室へ入っても誰にも挨拶することなく自分の席につく。


誰とも目を合わさないようにうつむき、カバンから教科書などを取り出していく。


ノートやペンケースはすべてアイドルのグッズだ。


それらをカバンから取り出した瞬間、恵一の表情が揺るんだ。


彼女たちの笑顔を見るとこちらまで笑顔になって、元気になれる気がする。


少しだけ気分がよくなった恵一はクラスメートたちに茶化される前に素早く引き出しの中にそれらを隠した。


そして最後に取り出したのは、薄型のデジタルカメラだった。


恵一はそれを大切な宝物のようにゆっくりと丁寧にカバンから取り出し、ツルリと光沢のある表面を指の腹でなでた。


このデジタルカメラは恵一が高校に入学してすぐに始めたアルバイトでお金をためて購入したものだった。


実際に宝物だと言ってしまってもいい品物だ。