恵一にとって病院の先生は友達や教師よりも信頼をおける存在だ。


そんな先生に面白い話題を差し出すのは悪いことじゃない。


クリーム色の階段を登りきるとそこは2畳ほどの踊り場になっていて、灰色の重たそうなドアが見える。


恵一はドアの前で立ち止まり、一度呼吸を整えた。


ここまで早足できたから少し息が切れてしまった。


普段ならもっと気をつけるのだけれど、今日は仮面の噂が気になったし、大田においかけてこられるんじゃないかと心配でつい早足になってしまった。


呼吸を整えてようやくドアに手を伸ばす。


ドアノブは冷たく頑丈そうで少しだけひるんでしまう。


鍵が開いていなければすぐに戻ろう。


そう思い、ドアノブにかけた手に力をこめる。


どうせ無理だと思っていたので、それがゆっくりと回転したときには恵一は息を飲んでいた。


一瞬頭の中が真っ白にもなる。